ANGEL-A

アンジェラ スペシャル・エディション [DVD]

アンジェラ スペシャル・エディション [DVD]


これからこの映画を見る人、まだ見ていない人は、できる事なら他の人の評価は聞かず、感想も読まず、何の先入観も無しで見て頂きたい。


mixiに書いたレビューとかネタバレ感想とか↓

<それでもどんな作品か雰囲気だけでも知りたい人向けの個人的感想>


劇場公開当時、「リュックベッソンの新作映画」というだけで観に行きました。

アクションではなく、難解なミステリーでもなく、ベタベタなラブストーリーでもなく、「ああそうか、これは自己啓発系映画なのだな」と思いました。

大衆向けの娯楽映画ではないけれど、ストーリーもテーマもとてもシンプルでわかりやすく真っ直ぐに伝わってくる作品です。

自分の感情がわからない、自分が好きになれない、そんな気持ちに悩んでいる人に特にお薦めしたい作品。


劇場へ二度観に行き、二回とも同じシーンで泣き、自分の涙腺の脆さに聊か苦笑せざるを得なかったけど、まさかDVDを買って家で観てまで同じシーンで泣くとは思わなかった。

決して泣かせる為の映画ではないし、泣く為に観るような映画ではないと思っているんだけど、気が付くと感極まってる自分がいる。


色んなテーマを詰め込みすぎて何が言いたいのかわからなくなってしまった大作映画や、伏線を張るだけ張って謎解きに集中しすぎて本筋がわからなくなってしまったミステリー、観客にメッセージを投げかけて敢えて答えを出さない風刺映画に疲れていた時に、あまりにも単純で真っ直ぐなこの作品はすごく爽やかで気持ちがスッキリしました。


それでもまだ本音を出せない自分がいるけれど、悩んだ時にこれを観ると少しずつ前進できそうな気がする。




一回目に劇場で観に行った時一緒に観たのが「Vフォー・ヴェンデッタ」だったから、余計にアンジェラのスマートな部分が栄えて見えた。
ヴェンデッタも多分単体で観たら決してつまらなくはなかったんだけど、やはりテーマ性を前面に出しすぎな感があって、正直くどいと思った。
その上答えは観ている人に委ねるっていう。
いや、そういうのもアリはアリなんだけど、最近そうゆうの多すぎっつうか…。


アンジェラもそういう意味では「くどい」というか、わかりきった事をテーマにしてる分、醒めちゃうって人もいるかもしれない。
それでも俺は好き。






















<以下、本編細部まで踏み込んだネタバレ感想>

※まだ観てない人は絶対に読まないで下さい!




自分を欺き、口を開けば言い訳だらけのアンドレ
傷つく事を恐れ、本音を出せず、自分はこんなに辛い思いをしているのに誰にもわかってもらえないと嘆くだけで努力をしない男に自分自身が重なって共感。


アンジェラは常に正論を言い、その時すべき事を単刀直入にこなす。
アンドレにとって本音を素直に出して自由に生きるアンジェラは眩しくて、何でもできる彼女が羨ましくて恨めしくすら感じる。


レストランで彼女が自分の正体を告白するシーンでボーカル曲がかかり、劇場で見ている時には背筋がゾクゾクとした。
話の展開的にはとてもチープだけど、スマートでいい演出だと思った。


最初からこの作品に複雑な事など何もなく、言いたい事は簡潔に、何の隠喩も使わずにストレートに述べているように感じる。だから直接心に響く。


途中までは自己嫌悪しているアンドレに感情移入するように作られていて、わかっているのに本音を出せないアンドレを見ている事がもどかしい。



クライマックスで愛に気付いたアンドレがアンジェラへ自分の気持ちを伝えた時、立場は逆転する。


彼女はアンドレに対する正論や本音を言ってはいたものの、自分の感情を表に出してはいなかった。
アンドレに言われて初めて自分の気持ちに気が付くアンジェラ。


この時既にアンドレはダメな男ではなくなっていて、自分の本音を出せる理想の人間になれているから、観ている自分は置いていかれたような気持ちになるが、そこで自分の感情がアンジェラに共感している事に気付く。


自分の気持ちがわからない、自分の正体がわからない、どうすればいいのかわからない、本当の気持ちを出せない。本音を言うのが怖い。


物語の主人公はアンドレであり、アンジェラ自身であった事に気付いた時、思わず胸に込み上げてくる物があった。


橋の上で自分の気持ちをぶつけるアンドレ
必死に自分の気持ちを隠そうとするアンジェラ。


アンジェラへ真っ直ぐ愛を伝えるアンドレと自分の気持ちに戸惑いを隠せないアンジェラ。
アンジェラがようやく自分の気持ちに気付けた瞬間、本当に素直になれた瞬間、嬉しくて涙が零れた。


ラストでは翼が生えて天上へ飛び立つアンジェラと、彼女に必死にしがみつく無様なアンドレが不恰好に揉み合いながら空へ舞い上がり、そして再びセーヌ川へ…

ラストはやっぱりチープだと思ったし、アンジェラに翼が生えて飛び立って、それにアンドレがしがみついて必死で引き止めようとする所なんて泣きながら笑っちゃったけど、この話のオチはこうでなければいけないと思うし、誰にでもわかるオチだけど、だからこそ綺麗にまとまっていて良い作品だと思った。